日本には、2019年の労働施策総合推進法の改正(いわゆるパワハラ防止法)まで、職場のいじめに関する法律はありませんでした。改正法は、パワーハラスメントを三つの要素で定義しており、そのすべてを満たす必要があります。第一に、優越的な関係を背景とした言動であることです。上司だけでなく、他の人が頼っている専門知識を持つ同僚や、集団である場合も含まれます。第二に、業務上必要かつ相当な範囲を超えていることです。第三に、労働者の就業環境が害されることです。
厚生労働省の指針は、典型的な六つの類型を示しています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害です。また、通常の相当な範囲での指導や注意はハラスメントにあたらないことも明確にしています。
この法律は、ハラスメントを犯罪とするものでも、労働者に新たな請求権を与えるものでもありません。企業に求めているのは防止措置です。社員に周知された明確な書面の方針、就業規則の懲戒規定、相談窓口、苦情の迅速かつ公正な調査、そして不利益取扱いからの保護です。この義務は、大企業には2020年6月1日から、中小企業には2022年4月1日から適用されています。
外資系企業にとってのポイント
- グローバルの方針だけでは足りない。 日本語の方針、国内の相談窓口、日本の就業規則の懲戒規定が必要です。
- 率直なマネジメントスタイルが申し立てられることもある。 会議の場での公然とした批判、グループ宛てに送られる厳しい書面のフィードバック、本来の役割を大きく超える要求の繰り返しは、いずれも定義に該当しうるものです。日本の社員を遠隔でマネジメントする地域本社の幹部に説明しておきましょう。
- 苦情は退職時に表面化することが多い。 ハラスメントの申立ては、争いのある退職の過程で持ち出されることが多く、和解のコストを押し上げます。
- 管理職のリファレンスチェックで確認する。 日本のチームを率いる幹部を採用する際は、否定的なフィードバックをどう伝えるかを尋ねましょう。
出典
- 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(労働施策総合推進法)第30条の2(2019年改正)
- 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(2020年)