判決の内容
最高裁第三小法廷は同日に言い渡した2件の判決で福岡高裁の判断を破棄し、福岡県糸島市の消防長が2017年3月に行った処分を是認しました。
1件目では、係長が、新人職員をロープで鉄棒に縛り付けて懸垂をさせ、力尽きた後も数分間ぶら下がった状態にさせる行為に加わったほか、押したり叩いたりし、器材に向かって大声で謝罪させていました。この係長は暴言について文書による注意をすでに受けていました。処分は上限である停職6か月でした。2件目では、小隊長が10年以上にわたり、少なくとも10人の部下に同様の過酷な訓練を課し、本人や家族を侮辱していました。この小隊長は免職となりました。
高裁は、重傷者がいないこと、両名に懲戒歴がないこと、一定の反省を示していることから、いずれの処分も重すぎると判断していました。最高裁は、これらの行為は指導や訓練の範囲を大きく逸脱し、負傷の有無にかかわらず恐怖と屈辱を与え、職場環境を著しく害したと判断しました。消防の職務に厳しい訓練が必要であることも、正当化の理由にはならないとしました。
なぜ重要か
いずれも地方公務員法に基づいて判断された公務部門の事案であり、民間企業の解雇は労働契約法に基づいて判断されます。しかし最高裁は、長期にわたるパワーハラスメントは最も重い処分を正当化し得ること、負傷がないことは処分を軽くする事情にならないことを示しました。
企業が取るべき対応
- 負傷が生じるのを待たない。 屈辱や威圧そのものを問題として調査してください。
- 注意の段階を踏む。 本件では、過去の文書による注意が無視されていたことが重く見られました。記録に残してください。
- パターンに目を向ける。 職員アンケートや若手職員の退職も証拠の一部でした。早めに対応してください。
- 処分は職場の文化ではなく行為に見合ったものにする。 「うちではこうやって鍛える」は抗弁になりません。
出典
- 最高裁判所第三小法廷2025年9月2日判決、令和6年(行ヒ)第214号及び令和6年(行ヒ)第241号
- 地方公務員法第29条、労働契約法第15条及び第16条