日本の企業は、就業規則に定めた段階的な処分によって懲戒を行います。典型的には、戒告・けん責(始末書の提出を求める場合もあります)から、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇を経て、最も重い懲戒解雇に至ります。名称や順序は企業によって異なりますが、原則は同じです。企業が使えるのは就業規則に列挙された処分だけであり、しかも列挙された事由に該当する場合に限られます。
最高裁判所は2003年のフジ興産事件でこの原則を示しました。懲戒を行うには、処分の種類と事由が就業規則に記載され、その就業規則が従業員に周知されていなければなりません。そのうえで労働契約法第15条が、解雇と同じ構造の第二の基準を加えています。行為の性質に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない処分は、権利の濫用として無効です。裁判所は、処分の均衡、過去の事例との整合性、本人の勤務歴、弁明の機会が与えられたかを検討します。時間の経過も問題になります。2006年のネスレ日本事件で最高裁は、根拠となった出来事から何年も経ってから行われた懲戒処分を無効と判断しました。
減給には法律上の上限があります。1回の減給額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、1賃金支払期における総額はその期の賃金総額の10分の1を超えてはなりません。また、同じ行為を二度処分することはできません。
外資系企業にとってのポイント
- 処分の前に就業規則を確認する。 非違行為を列挙したグローバルの行動規範だけでは足りません。日本の就業規則に懲戒事由として定められていない行為であれば、処分を正当化するのは非常に困難です。
- まずは軽い処分から使う。 裁判所は段階を踏むことを求めます。記録に残ったけん責が、後の解雇を正当化する証拠になることも少なくありません。
- 本人に弁明の機会を与える。 決定の前に本人の説明を書面で記録しておくことは標準的な実務であり、当然に求められます。
- 迅速に、ただし十分な調査を経て対応する。 行為を把握してから処分までの期間が長いと、処分の有効性が弱まります。
出典
- 労働契約法第15条
- 労働基準法第89条、第91条
- 最高裁判所、フジ興産事件、2003年10月10日
- 最高裁判所、ネスレ日本事件、2006年10月6日