懲戒解雇は懲戒処分の最上位であり、日本で使用者がキャリアに残し得る最も重い傷です。横領、重大なハラスメント、使用者の信用を損なう刑事事件での有罪判決、経歴詐称、長期の無断欠勤などの行為に対して用いられます。懲戒処分であると同時に解雇でもあるため、2つの基準をクリアしなければなりません。就業規則に定められた事由に該当し、労働契約法第15条のもとで相当であること、そして同法第16条のもとで客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であることです。裁判所は、行為自体は認めつつ処分が重すぎると判断することがよくあります。そのため多くの就業規則には、一段軽い諭旨解雇(退職勧告)が定められており、一定期間内に退職届を出せば解雇を免れ、退職金の全部または一部を受け取れる場合があります。こちらのほうが法的リスクは小さくなります。
金銭面では2つの影響があります。第一に予告です。労働基準法は、労働基準監督署が労働者の責に帰すべき事由に基づく解雇であると認定しない限り、30日前の予告または予告手当の支払いを求めています。懲戒解雇と称するだけでは予告義務はなくなりません。第二に退職金です。多くの就業規則は、懲戒解雇された従業員には退職金の全部または一部を支給しないと定めています。裁判所が全額不支給を認めるのは、その行為が長年の勤続の功を抹消するほどの場合に限られます。2003年の小田急電鉄事件で東京高裁は、電車内での痴漢行為で有罪となった従業員の懲戒解雇を有効としつつ、行為が業務外のものであったことから、会社に退職金の3割の支払いを命じました。
従業員は失業給付の面でも不利益を受けます。重大な非違行為による解雇は正当な理由のない自己都合退職と同様に扱われ、給付開始までに給付制限期間が設けられます。
外資系企業にとってのポイント
- 適切な手段であることはまれ。 非違行為が重大で証拠が十分でない限り、懲戒解雇を法廷で争うより、合意による退職のほうが通常は安く早く済みます。
- 解雇予告除外認定を申請するか、予告手当を支払う。 監督署の認定なく即日解雇すること自体が法令違反です。
- 退職金が不支給になると決めつけてはいけない。 行為が事業に直接損害を与えたものでない限り、一部支給を見込んで予算を組みましょう。
- 採用時にも関係する。 経歴詐称はよくある懲戒事由です。シニア採用でのバックグラウンドチェックやリファレンスチェックにより、懲戒解雇を使わざるを得なくなる可能性を減らせます。
出典
- 労働契約法第15条、第16条。
- 労働基準法第19条、第20条。
- 東京高裁平成15年12月11日判決(小田急電鉄事件)。
- 雇用保険法第33条。