同法は、食品表示偽装や自動車のリコール隠しなど、内部の人間からの告発によって明るみに出た一連の不祥事を受けて2004年に成立し、2006年4月に施行されました。保護の対象は労働者で、2022年からは役員と退職後間もない元従業員も含まれます。対象となるのは、同法の対象となる事実、すなわち消費者の安全、環境、公正な競争、個人情報などの分野にわたる多数の法律に定める犯罪行為または過料の対象となる違反行為の通報です。保護されるかどうかは通報先によって異なります。社内への通報は、不正の目的でないことのみが要件です。行政機関への通報、とりわけ報道機関への通報は、裏付けとなる根拠や外部に通報する理由について、より厳しい要件を満たす必要があります。保護される通報を理由とする解雇は無効で、その他の不利益な取扱いも禁止されています。
2022年6月1日に施行された2020年改正は、事業者側の義務を変えました。従業員300人超の事業者は、内部通報を受け付けて調査する体制を整備し、対応業務に従事する者を指定しなければなりません。従事者は守秘義務を負い、通報者を特定させる情報を漏らすと30万円以下の罰金が科されます。中小の事業者には努力義務が課されています。
2025年6月に成立した改正法は、2026年12月1日からさらに踏み込みます。公益通報をしたことを理由とする解雇や懲戒は犯罪となり、個人には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人には3,000万円以下の罰金が科されます。通報後1年以内の解雇または懲戒は通報を理由とするものと推定されるため、事業者が反証しなければなりません。保護の対象はフリーランスにも拡大され、正当な理由なく通報者を特定しようとすることも禁止されます。
外資系企業にとってのポイント
- グローバルのホットラインを日本法と照らし合わせる。 海外で運営されるグループの倫理ホットラインでも義務を満たすことはできますが、日本からの通報を対象とし、対応者の守秘義務を確保し、日本語で従業員に周知されていることが条件です。
- 立証責任が移りつつある。 2026年12月からは、通報後1年以内の解雇や懲戒処分には、通報と無関係であることを示す十分な記録が必要になります。
- 通報者探しは違反になった。 匿名の通報を受けて「誰が送ったのか」と尋ねるリージョナルリーダーは、会社をリスクにさらしています。
- シニアのコンプライアンス人材にはこの法律の理解が必要。 日本の法務・コンプライアンスの候補者は、2026年の改正内容を面接で説明できるべきです。
出典
- 公益通報者保護法(平成16年法律第122号)、2020年改正(2022年6月1日施行)および令和7年法律第62号による改正(2025年6月11日公布、2026年12月1日施行)
- 消費者庁、公益通報者保護法に基づく事業者がとるべき措置に関する指針