大手日本企業の正社員にとって、他の都市への異動はキャリアのごく普通の一部です。銀行、商社、メーカー、保険会社は、本社、地方支店、海外拠点の間で人材をローテーションさせており、総合職は一般に、採用時点で全国どこにでも配属されうることを受け入れています。広範な転勤命令権は、雇用保障と引き換えの取引の一部となっています。
裁判所もこれを認めてきました。1986年の東亜ペイント事件で最高裁は、就業規則に転勤の定めがあり、勤務地を限定する合意がない場合には、使用者は同意なく転勤を命じることができると判断しました。転勤命令が権利の濫用として無効となるのは、業務上の必要性がない場合、退職に追い込むなど不当な目的による場合、または労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合に限られます。また2001年以降、育児・介護休業法により、事業主は就業の継続が困難となる転勤を命じる前に、従業員の育児や介護の状況に配慮することが求められています。
意識は変わりつつあります。共働き世帯の増加や介護の負担により転居は難しくなっており、勤務地限定のコースを設けたり、転勤を本人同意制にしたりする大企業も出てきています。
外資系企業にとってのポイント
- 転居したくないことが転職の動機になる。 目前に迫った転勤、あるいはその懸念は、日本企業の優秀な候補者が東京の外資系企業への転職を検討する典型的な理由の一つです。
- 勤務地を書面で明示する。 2024年4月から、労働条件通知書には就業場所と業務の変更の範囲を記載しなければなりません。転勤させることがないのであれば、そう明記してください。
- 範囲の限定は両刃の剣。 勤務地限定の契約にすると、拠点が閉鎖された場合の配置転換が難しくなり、リストラの局面で問題になります。
- 海外赴任も転勤。 海外への赴任も同じ法的論理に従うため、グローバルのモビリティ条項があっても、その裏付けとなる日本の就業規則が必要です。
出典
- 最高裁判所 東亜ペイント事件判決(1986年7月14日)
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第26条
- 労働基準法施行規則第5条(2024年4月施行の改正後)