日本のリモートワークへの移行は遅く、しかも部分的なものにとどまりました。2020年以前は、大手のIT企業やコンサルティング会社を除けば珍しい働き方でした。コロナ禍で一気に広がったものの、その後かなりの部分が後退しています。国土交通省の年次調査によると、2024年度の雇用型就業者に占めるテレワーカーの割合は24.6%で前年からほぼ横ばいであり、完全リモートよりもハイブリッド型のほうが一般的です。実施率は地方や中小企業に比べ、東京や大企業で大幅に高くなっています。東京都の調査では、都内の従業員30人以上の企業のうち、2025年10月時点でテレワークを導入している企業は64.0%で、1年前の58.0%から上昇しました。
「テレワーク法」は存在しません。労働時間の上限、時間外労働の割増賃金、36協定、休憩、労働安全衛生は、自宅でもオフィスと同様に適用されます。2021年3月25日に改定された厚生労働省のガイドラインがその運用方法を示しています。労働時間はログ記録や自己申告で把握でき、業務中の私用による短時間の中抜けは休憩時間として扱うかフレックスタイム制で対応できます。また、対象者、連絡方法、費用負担などのルールを事前に労使で取り決め、就業規則に定めるべきとされています。労働基準法上、通信機器や通信費などの費用を従業員に負担させる場合は、その旨を就業規則に記載しなければなりません。
一方、育児関連法制はテレワークを後押しする方向に動いています。2025年4月から、3歳未満の子を養育する従業員や家族を介護する従業員がテレワークを選択できるよう措置を講じることが、事業主の努力義務となりました。2025年10月からは、3歳から小学校就学前までの子を養育する従業員について、事業主は5つの選択肢のうち2つ以上の措置を講じなければならず、その一つが月10日以上のテレワークです。
外資系企業にとってのポイント
- 労働時間の把握は引き続き必要。 在宅勤務の従業員が深夜にメール対応をしていれば、時間外・深夜の割増賃金が発生します。「社員を信頼している」というのは勤怠管理の仕組みにはなりません。
- 就業規則に明記する。 対象者、手当、インターネットや機器の費用負担、労働時間の報告方法は、グローバルのポリシーページではなく就業規則に定めるべき事項です。
- 出社回帰の方針は採用の問題になる。 シニアのバイリンガル人材は、リモート勤務日を処遇の一部とみなしていることが少なくありません。それをなくすグローバル方針によって、内定承諾済みの候補者がカウンターオファーに応じてしまうこともあります。
- 育児期の従業員向けの選択肢を確認する。 2025年10月の義務をテレワークで満たしている場合、その対象者についてテレワークを撤回するのは容易ではありません。
出典
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(2021年3月25日改定)
- 国土交通省「テレワーク人口実態調査」2024年度
- 東京都産業労働局、テレワークに関する調査(2025年10月31日時点、2026年4月公表)
- 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)、改正後(2025年4月・10月施行)
- 労働基準法第89条