嘱託とは「委ねる」という意味です。かつては産業医や顧問のように、特定の目的のために迎えられる専門家を指していました。今日では多くの日本企業で、長年勤めた従業員が定年に達した後に移る身分を指します。正社員としての雇用は60歳で終わり、嘱託として新たに有期契約を結び、65歳まで、場合によってはそれ以降も1年ごとに更新します。労働力調査では、2025年の嘱託は約105万人でした。
この呼称に法的な意味はありません。嘱託は、労働契約法の更新・無期転換ルールで保護される有期雇用労働者であるか、業務委託契約で迎えられる場合は労働者ではないかのいずれかです。条件は就業規則で定められます。実際には賃金が大幅に下がることが多く、賞与は減るかなくなり、職務内容はほとんど変わらなくても役職は外れます。裁判所は、定年後の再雇用であることが同一労働同一賃金のルールの下で一定の待遇差を正当化しうる事情であると認めていますが、それにも限度があります。
定年後に再雇用された有期雇用労働者について、企業が5年の無期転換申込権の発生を免れるには、都道府県労働局の認定を受けた計画が必要です。
外資系企業にとってのポイント
- 履歴書の肩書きに注目する。 日本企業で嘱託となっている応募者は、多くの場合60代前半の元部長や専門職で、以前と同様の仕事をはるかに低い賃金でこなしています。役割が合えば非常に費用対効果の高い人材です。
- 60歳以前の年収を尋ねる。 現在の嘱託としての給与は、本人がかつて得ていた報酬や判断力の価値を過小に示しています。本人の期待水準は低いのではなく、現実的なのかもしれません。
- 自社でこの呼称を使うなら条件を明文化する。 自社の就業規則に嘱託の区分を設ける場合は、賃金・更新・職務について明確な条件を定め、無期転換の特例を受けたいなら認定計画も必要です。
- 相手の立場を尊重する。 嘱託契約で働く元幹部は、社内で以前の人脈や存在感を今も持っています。
出典
- 総務省「労働力調査(詳細集計)」2025年平均
- 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)第9条
- 専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法(定年後再雇用者の特例)