「ヘッドハンター」は、エグゼクティブサーチ会社のパートナーを指すこともあれば、求人データベースを通じてメッセージを送る人材紹介会社のリクルーターを指すこともあります。たとえばビズリーチでは、登録している人材紹介会社のリクルーターがヘッドハンターと呼ばれています。ヘッドハンティングされることには一定の名誉が伴い、市場から求められたことを意味します。「引き抜き」という言葉は、同じ行為を人材を失う側の企業から見た表現です。
法的な位置付けは明快です。憲法第22条は職業選択の自由を保障しており、他社の従業員にアプローチすることは適法です。報酬を得てこれを行う者は職業紹介事業を営んでいることになり、職業安定法に基づく許可が必要です。
限界は、自社の同僚を勧誘する従業員に関する裁判例から導かれます。ラクソン事件(東京地裁、1991年2月25日判決)では、営業部門の責任者が部下29人の競合他社への移籍を秘密裏に計画し、その多くを社員旅行と称して連れ出しました。裁判所は、単に転職を勧めることは違法ではないとしたうえで、社会的相当性を逸脱し、著しく背信的な方法で行われた引き抜きは、雇用契約上の誠実義務に違反すると判断しました。そして、その本部長と、彼らを採用した会社に対して損害賠償を命じました。
外資系企業にとってのポイント
- 競合他社の人材の採用は適法。 リスクは、集団での移籍という事実そのものではなく、その進め方にあります。
- チームごとの引き抜きには注意する。 新たに採用した人が在職中に元同僚を勧誘している場合は、移籍の計画に関与させず、一人ひとりが個別に判断し退職するようにしてください。
- 取締役はより重い義務を負う。 日本企業の現職の取締役は、在任中、忠実義務と競業の制限を負います。社内から勧誘を行う前に専門家に相談してください。
- 機密情報を持ち込ませない。 新たに採用した人に対し、前の勤務先の顧客リストや書類を持ち込んではならないことを書面で明確にしてください。
- 役職が上がるほどアプローチの仕方が変わる。 日本のシニアエグゼクティブは、突然のメッセージよりも、知人を介したアプローチを好むことがよくあります。
出典
- 日本国憲法第22条。
- 職業安定法第30条。
- 東京地方裁判所、ラクソン事件、1991年2月25日判決。