日本には法定の退職補償の算定式はなく、権利濫用の基準を満たさない解雇は、補償の対象ではなく無効とされます。しかし実際には、争われた解雇が社員の職場復帰で終わることはごくまれです。企業が一定額を支払い、社員が請求を取り下げて退職し、双方が通常は守秘義務と相互の権利放棄を含む合意書に署名します。この金額が解決金です。
金額はどの算定式よりもリスクを反映します。社員の主張が強いほど、また紛争が長引いた場合に積み上がるバックペイが多いほど、金額は高くなります。労働政策研究・研修機構が2020年と2021年に終結した事案を調べたところ、労働審判でも裁判上の和解でも、解雇事案の96%超が復職ではなく金銭で解決していました。中央値は労働審判で約150万円、裁判で約300万円で、約10年前の調査からおよそ30%上昇しています。都道府県労働局のあっせんは、企業に参加義務がなく、金額ははるかに小さくなります。4つの労働局で2023年度に終結した事案の中央値は約23万5,000円でした。月給の高いシニアや勤続の長い社員は、これらの中央値を大きく上回ります。
無効な解雇を金銭の支払いで解決する法的な制度の提案は長年議論されていますが、本稿執筆時点で、そのような制度は成立していません。
外資系企業にとってのポイント
- 着手する前に予算を確保する。 日本での退職の大半は交渉によるものです。和解金は、勤続年数と記録の充実度に応じて、賃金の何か月分かで見積もりましょう。
- 早く支払うほうが通常は安く済む。 請求が出る前に合意した退職は、労働審判で合意するより、金銭面でも経営陣の時間の面でもコストが小さくなります。
- その人とともに失われるものを数える。 勤続の長い社員は、人間関係や組織の記憶を持ち去ります。厳しい退職のさせ方は、ほかの社員の離職を招くこともあります。退職させないことが、より安くつく判断である場合もあります。
- どう解決したかは記憶される。 人材のコミュニティは小さく、記憶は長く残ります。寛大で尊厳ある退職は、次に採用したい候補者に対する雇用主ブランドを守ります。
出典
- 労働政策研究・研修機構、労働政策研究報告書No.226(2023年)、労働審判および裁判上の和解における雇用終了事案の比較分析。リサーチアイ第78回(2023年)。
- 労働政策研究・研修機構、労働政策研究報告書No.237(2025年)、労働局あっせんにおける解雇事案の分析。