ローテーションはキャリアの考え方であり、それを実行する場が年に一度の定期異動です。大手メーカーに入社した新卒社員は、地方の営業所で3年、生産計画で3年、本社人事で2年を過ごし、海外勤務を経て、ようやく管理職のラインに落ち着くといった道をたどります。目的は特定の職能を極めることではありません。事業全体を理解し、あらゆる部署に人脈を持ち、会社が必要とするところにどこへでも配置できる人材を育てることです。
この仕組みはメンバーシップ型雇用に適合しています。正社員は職務ではなく会社に採用され、また裁判所は就業規則に基づく広範な配転命令権を企業に認めているため、人事部は人を自由に動かせます。ローテーションには別の役割もあります。知識を広め、特定の顧客や取引先との過度に近い関係を防ぎ、将来の経営幹部を不慣れな職務で試すことです。報酬は職務ではなく等級と勤続に応じて決まるため、異動しても大きくは変わらず、異動のコストは小さく済みます。
一方で、その代償も見えやすくなっています。企業がデータサイエンティスト、サイバーセキュリティの専門家、経験豊富な人事・法務の専門職を必要としている時期に、ローテーションは深い専門性を持つ人材をあまり生みません。社員、特に若手は、自分の行き先に意見を言いたいと考えるようになっています。日立製作所、富士通、KDDIなどジョブ型の制度に移行する企業は、人事主導のローテーションを減らし、社内公募や本人の選択を重視するようになっています。
外資系企業にとってのポイント
- 職務経歴書から、どこを回り、どこに定着したかを読み取る。 15年で複数の職能を経験するのは、優秀なゼネラリストとしては普通のことです。どの異動を本人が選んだのか、どこに戻りたいのかを聞きましょう。
- スキルは直接評価する。 ローテーションの経歴から分かるのは潜在力と適応力であり、職能の深さではありません。専門職のポジションでは、ケース演習や構造化されたワークサンプルを用いましょう。
- ゼネラリストは強みにもなる。 カントリーマネージャーや、営業、オペレーション、渉外にまたがるポジションでは、日本企業のあらゆる部分を見てきた候補者のほうが、専門家より強いことがあります。
- 質問されることを想定しておく。 ローテーション型の企業出身の候補者は、そのポジションにどのくらい在籍するのか、その次は何かをよく尋ねます。本当の答えを用意しておきましょう。
出典
- 最高裁判所、東亜ペイント事件判決、1986年7月14日(就業規則に基づく使用者の配転命令権)。
- 日本政府(内閣官房・経済産業省・厚生労働省)「ジョブ型人事指針」、2024年8月。