日本企業において、引継ぎは退職の付け足しではなく、正式な段階の一つです。退職する従業員は、未処理の案件、連絡先、期限、記録の保管場所をまとめた引継書を作成します。そのうえで、顧客、取引先、同僚に後任者を直接紹介し、主要な顧客には一緒に訪問することも多く、関係が一人から次の一人へと引き渡されたことが目に見えるようにします。シニアの経営幹部であれば、数十の関係が対象となり、数週間かかることもあります。
法律は慣行ほど細かくありません。無期雇用の従業員は、民法により2週間の予告で退職できます。就業規則や契約では1〜3か月前の申し出を求めるのが一般的で、シニア層の多くはそれに従います。引継ぎを完了させる独立した法的義務はなく、引継ぎが不十分だったことを理由に、使用者が支払済みとなるべき賃金を差し止めることもできません。就業規則では非違行為があった場合に退職金を減額・不支給とできる定めを置くことが多いものの、裁判所がそれを認めるのは、長年の勤続の功を抹消するほどの著しい背信行為がある場合に限られます。1984年の日本高圧瓦斯工業事件で、大阪高等裁判所は、会社の承認も就業規則が定める予告もなく、引継ぎもせずに突然退職した従業員に対し、退職金の支払いを命じました。実際には、圧力は法的なものではなく社会的なものです。後始末をせずに去ったことは元同僚や顧客の記憶に残り、業界は狭い世界です。
引継ぎは通常、退職予告期間の最後の部分と並行して行われ、その後に従業員が最後にまとめて取得する年次有給休暇が続きます。両者は同じ数週間を奪い合うことになり、そこから時期をめぐる対立が生じます。
外資系企業にとってのポイント
- 引継ぎを圧迫しない。 シニア人材の引継ぎを短縮させるような入社日を求めると、責任を重んじる人に負担をかけ、まさにその人を採用した理由であるネットワークでの評判を損ないかねません。
- 入社日に織り込む。 シニアのポジションでは、内定受諾から入社まで1〜3か月を見込んでください。退職の申し出、引継ぎ、有給休暇の消化にはいずれも時間がかかります。
- その間も連絡を保つ。 引継ぎ期間は、カウンターオファーや迷いが生じる時期です。初出社の日まで、定期的に支援的な連絡を続けてください。
- 自社を去る人にも同じことを求める。 就業規則に引継ぎに関する期待を定め、退職の申し出があったら計画を合意してください。
出典
- 民法第627条(期間の定めのない雇用の2週間の予告)。
- 労働基準法第24条(賃金の全額払い)。
- 大阪高等裁判所、日本高圧瓦斯工業事件、1984年11月29日判決。