日本の多くの企業、特に営業、IT、スタートアップでは、たとえば20時間分や30時間分の時間外労働に相当する定額を毎月支払っています。従業員は実際にその時間働いたかどうかにかかわらず受け取ります。利点は人件費の予測可能性と給与計算の簡素化です。リスクは、裁判所がその仕組みを無効と判断することです。
最高裁判所は一連の判例で判断基準を示してきました。康心会事件(2017年)では、医師の高額な年俸について、時間外労働分を他の部分と区別できないため割増賃金を含むとは認められないとされました。日本ケミカル事件(2018年)では、契約と運用から時間外労働の対価として支払われていたことが示された定額手当が認められました。国際自動車事件(2020年)では、歩合給から割増賃金を差し引くタクシー会社の計算方法が、実質的に時間外労働の対価とはいえないとして否定されました。ここから2つの要件が導かれます。時間外労働分が通常の賃金と明確に区別できること、そして実際に時間外労働の対価として支払われていることです。カバーする時間を超えた分は追加で支払わなければなりません。
仕組みが否定された場合の結果は深刻です。定額部分は通常の賃金とみなされて時間単価が上がり、そのうえですべての時間外労働について最大3年分の割増賃金を支払う必要が生じます。
外資系企業にとってのポイント
- 正しく規定する。 契約と就業規則には、金額、カバーする時間、超過分は別途支払うことを明記すべきです。求人広告にも同じ内容を示すことが求められます。
- 労働時間の把握は続ける。 固定残業代を支払っても、労働時間を記録し超過分を支払う義務はなくなりません。
- 低い基本給を隠すために使わない。 固定残業代を除いた基本給が最低賃金を上回っている必要があり、固定残業代の比重が大きいと争いを招きます。
- 候補者に確認する。 候補者が提示する給与に固定残業代が含まれていることがあります。自社のオファーと比較する前に、何時間分をカバーしているかを確認してください。
出典
- 最高裁判所、康心会事件、2017年7月7日。日本ケミカル事件、2018年7月19日。国際自動車事件、2020年3月30日
- 労働基準法第37条