判決の内容
下田で交番の責任者を務めていた31歳の警部補が、2012年3月に自ら命を絶ちました。最後の1か月、本来の職務に加えて新人の指導を引き受け、連続する侵入窃盗事件のため警らを続け、海外研修の準備もしていました。時間外労働は約43時間から112時間超に増えました。休日1日をはさんで14日間の連続勤務が2回あり、それぞれに24時間勤務が5回含まれていました。3か月前のストレスチェックでは最も低い評価を受け、そのことを課長に伝えていましたが、何の対応もとられませんでした。
高裁は、業務が公務災害の認定基準における「質的に過重」の基準を満たさないとして、両親の損害賠償請求を棄却しました。最高裁第二小法廷は全員一致でこれを破棄しました。使用者は、疲労や心理的負荷が過度に蓄積して従業員の健康を損なうことのないよう業務を管理しなければならず、業務を指揮する管理職は、この義務に沿って権限を行使しなければなりません。認定基準は判断の参考にはなるものの、判断を限定するものではありません。本件では、上司は勤務日誌や超過勤務の報告から業務量を把握でき、ストレスチェックの結果も知っていながら、負担を軽減する措置を何もとっていませんでした。事件は損害額の算定のため差し戻されました。
なぜ重要か
本判決は2000年の電通事件の考え方を適用し、それを公務員にも及ぼしました。責任の有無は、補償の基準を超えたかどうかではなく、管理職が何を把握できたかによって決まります。
企業が取るべき対応
- 時間外労働の報告に対応する。 労働時間の急増や休日のない長期の連続勤務があれば、直属の上司が業務量を見直すきっかけとすべきです。
- ストレスチェックの結果を放置しない。 従業員が悪い結果を共有した場合は、医師による面接指導を勧め、業務を調整してください。
- 管理職に自らの役割を教育する。 義務は管理職を通じて果たされるものであり、労働時間を記録するだけでは足りません。
- 追加の業務に注意する。 優秀な社員にプロジェクトを積み重ねていくのは、典型的なパターンです。
出典
- 最高裁判所第二小法廷2025年3月7日判決、令和5年(受)第927号
- 労働契約法第5条、最高裁判所2000年3月24日判決(電通事件)