日本の従業員が課長や部長などの役職に昇進すると、給与明細で最も目に見える変化は、基本給の大幅な増額よりも、新たに役職手当が付くことである場合が多くあります。金額は通常、役職の階層に応じて上がり、その役職に就いている間支給されます。2019年11月分の賃金を対象とする厚生労働省の2020年調査では、役職手当は通勤手当に次いで2番目に多い手当で、86.9%の企業が支給し、受給者への平均支給額は月41,600円でした。
この手当は時間外労働と密接に結び付いています。真に監督・管理の地位にある管理職は時間外労働の規制の適用除外となるため、多くの使用者は昇進時に役職手当を支給し、同時に時間外手当の支払いを止めます。しかし、その「管理職」に実質的な権限、労働時間の裁量、地位にふさわしい処遇がなければ、裁判所は一般の従業員とみなし、未払いの時間外手当の支払いを命じます。代表例は2008年1月に東京地裁が判決を下した日本マクドナルドの店長の事件で、「名ばかり管理職」が社会問題となるきっかけになりました。手当の額は、裁判所が考慮する要素の一つです。
家族手当、住宅手当、通勤手当と異なり、役職手当は時間外手当の算定基礎から除外できません。そのため、役職に就いていても適用除外とならない従業員については、時間外労働の単価が上がります。
外資系企業にとってのポイント
- 昇進で手取りが減ることがある。 多くの残業代を得ていた非管理職が、控えめな手当で適用除外の役職に昇進すると、手取りが減る場合があります。初めて管理職に就く候補者はこれを知っていますので、具体的な数字を示してください。
- 手当を払っても適用除外にはならない。 採用、予算、勤務時間に関する権限のないチームリーダーに管理職の肩書と手当を与えても、時間外手当の請求リスクは残ります。
- オファーを比較する際は換算する。 候補者の基本給には、相当額の役職手当が含まれていないことがあります。確認したうえで、固定の現金報酬総額に含めてください。
- 役割変更に伴う廃止には注意が必要。 役職を離れれば通常は手当もなくなりますが、それは就業規則にその旨が明確に定められている場合に限られます。
出典
- 厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」(2019年11月分の賃金)
- 労働基準法第37条、第41条第2号
- 東京地方裁判所 日本マクドナルド事件判決(2008年1月28日)