判決の内容
名古屋自動車学校の教習指導員2名は60歳で定年退職した後、1年契約で再雇用され、主任の肩書がなくなった以外は同じ業務に従事していました。月額基本給は約18万円と約16万7,000円から、約7万5,000円と約7万3,000円に下がり、勤続5年未満の正職員をも下回りました。賞与も同様に減額されました。
名古屋高裁は、基本給のうち定年時の60%を下回る部分と、これに対応する賞与の部分は、旧労働契約法第20条(現在のパートタイム・有期雇用労働法)にいう不合理な相違に当たると判断しました。
最高裁第一小法廷は全員一致でこれを破棄し、差し戻しました。基本給や賞与の相違が不合理とされることはあり得るものの、裁判所はまずそれぞれの性質と目的、すなわち正職員の基本給が勤続、職務、能力のいずれに対する対価なのか、再雇用者の基本給が何のために支給されているのかを明らかにしなければなりません。また、労使交渉の結果だけでなく、その具体的な経緯も考慮する必要があります。高裁はそのいずれも行っていませんでした。
なぜ重要か
本判決は、どちらの方向であれ単純な割合による基準を退けました。再雇用時の大幅な減額は、当然に適法でも当然に違法でもありません。
企業が取るべき対応
- 各賃金項目の目的を文書化する。 正社員と再雇用者それぞれについて、基本給、賞与、手当の目的を書き出してください。
- 再雇用者の賃金を若手社員と比較する。 同様の業務に就く新入社員や勤続の短い正社員を下回る賃金は、最も説明が難しくなります。
- 協議の記録を残す。 労働組合や従業員の要望にどう対応したかも、判断の要素となりました。
- 60歳から65歳までの処遇を見直す。 日本法人の再雇用条件は、前例を引き継ぐのではなく意図をもって設計すべきです。
出典
- 最高裁判所第一小法廷2023年7月20日判決、令和4年(受)第1293号(名古屋自動車学校事件)
- 旧労働契約法第20条、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条