日本では、営業秘密は雇用契約だけでなく、不正競争防止法によって保護されています。法律上の定義は3つの要件からなり、すべてを満たす必要があります。第一に、秘密として管理されていること。実務上は、どの情報が秘密であるかを従業員に明確に認識させる措置を使用者が講じていたことを意味します。第二に、技術上または営業上の有用性があること。第三に、公然と知られていないことです。3つのうち、請求が退けられることが最も多いのは秘密管理性です。裁判所は、その資料が重要だったという主張だけでなく、アクセス制限、秘密表示、守秘に関する規程や誓約書の有無を見ます。
民事上の救済手段は、複製物の廃棄を含む差止めと損害賠償で、損害額の立証を助ける推定規定もあります。営業秘密侵害罪の刑事罰は、個人については10年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金またはその併科で、営業秘密が海外で使用・開示された場合には罰金の上限が3,000万円に引き上げられます。従業員が業務に関して犯罪を行った会社には5億円以下、海外の事案では10億円以下の罰金が科されることがあります。技術が海外の競合企業に流出した注目事件が相次いだことを受け、2015年に罰則が大幅に強化されました。
実際の事件の多くは退職者が関わるものです。競合他社に移る前に顧客リストをダウンロードする営業担当者や、設計データを持ち出すエンジニアなどです。こうした従業員が起訴される例は増えています。
外資系企業にとってのポイント
- 保護されるかどうかは自社の管理次第。 秘密資料に表示を付け、アクセスを制限し、守秘義務を就業規則と署名入りの誓約書で定めてください。現地の従業員が読んだこともない英語のグローバルポリシーでは、証拠として弱いものになります。
- 採用だけでなく退職の段取りも計画する。 退職者には守秘義務を改めて伝え、端末を回収し、最後の数週間に不自然なダウンロードがないか確認してください。
- シニア採用者が持ち込むものを確認する。 前職の資料を持って入社する候補者は、本人だけでなく貴社にもリスクをもたらし、法人への罰金は高額です。そうしたものは一切不要であることを、オファーの段階で明確に伝えてください。
- 競業避止が効かない場面で有効。 裁判所は退職後の競業避止義務を限定的にしか認めないため、情報管理のほうが強い保護になることが多いのです。
出典
- 不正競争防止法第2条第6項(定義)、第3条・第4条(差止め・損害賠償)、第21条・第22条(罰則)(2015年改正、2025年6月1日施行の刑法改正後の規定による)
- 経済産業省「営業秘密管理指針」