日本の従業員持株会は、米国型のESOPとは別物です。社員が加入する持株会は、通常は民法上の組合として組織され、証券会社や信託銀行が事務を担います。毎月、給与と賞与から一定額が天引きされ、持株会が市場で勤務先の株式を購入し、各会員は拠出額に応じた持分(多くは単元未満)を保有します。拠出額は月数千円程度からと少額にでき、会員の持分が1単元に達すると、通常はその株式を自分の証券口座に移して売却できます。
ほとんどの持株会には、拠出額に一定割合を上乗せする会社の奨励金があります。奨励金は給与所得として課税されます。配当は会員に帰属し、その配当所得として課税されます。買付けは計画に基づき一定額で定期的に行われるため、本来であれば未公表の重要事実を知っている社員の買付けを禁じるインサイダー取引規制の適用除外に該当します。
上場企業ではほぼ例外なく導入されています。東京証券取引所の2025年3月31日時点の調査は、国内上場会社3,956社のうち、大手証券会社5社が事務を受託している3,265社を対象としています。これらの持株会の会員数は330万人で、各社の従業員の約40%にあたり、保有株式の時価は8兆2,600億円、会員1人あたり平均250万円でした。96.6%の企業が奨励金を支給しており、拠出額の10%が圧倒的に多く、平均は過去最高の10.7%でした。
持株会は社員だけでなく会社にも役立ちます。安定した友好的な株主層を形成し、買収防衛の面で意味を持ってきたほか、長期的なコミットメントの文化を支えています。非上場企業は事業承継対策に活用しており、信託を用いた仕組みでは、会社がまとまった株式を先に取得し、時間をかけて社員に分配できます。
外資系企業にとってのポイント
- 候補者の保有状況を尋ねる。 日本企業に長く勤めた社員は、持株会を通じてまとまった額を保有していることがあります。退職後も通常は株式を保有し続けられるため、転職のコストになることはまれですが、勤務先をどう捉えているかを知る手がかりになります。
- 奨励金は報酬の一部。 拠出に対する会社の奨励金は小さいながらも実質的な福利厚生であり、基本給だけのオファーでは再現できません。
- グローバルの制度は仕組みが異なる。 グループが割引付きの従業員株式購入制度(ESPP)を提供している場合、日本では割引分は一般に給与所得として課税され、給与で源泉徴収されないことも多くあります。入社時に確定申告の義務を説明してください。
- 給与天引きには協定が必要。 持株会の拠出金を給与から控除するには、書面による労使協定が必要です。
出典
- 民法第667条(組合契約)
- 金融商品取引法第166条および有価証券の取引等の規制に関する内閣府令(従業員持株会の適用除外)
- 労働基準法第24条(賃金からの控除)
- 東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要」(2026年2月)