日本企業の社長が退任すると、次のポストとして会長に就くことがよくあります。会長は社長より上位の役職で、通常は取締役にとどまります。その意味は会社によって異なります。会長が代表取締役の地位を保持し、戦略と人事について最終決定権を持ち、新社長は自分を選んだ前任者のもとで業務執行を担う会社もあります。一方で、経済団体、業界団体、政府の審議会などの対外的な役割を担い、経営には口を出さない会長もいます。会長の後は、相談役や顧問に就く人が多くいます。
会長は法定の機関ではありません。取締役会を主宰する議長は、定款または取締役会によって選ばれます。伝統的な企業では会長が取締役会の議長を務めることが多いものの、両者を分け、社外取締役を議長とする上場企業が増えています。投資家や議決権行使助言会社は会長に注目しています。実権を保持する元最高経営責任者が、現職に対する取締役会の監督を鈍らせかねないからです。2018年以降、東京証券取引所は上場企業に対し、相談役や顧問として残る元社長の開示を求めています。
オーナー経営の会社では、会長は創業者や一族の当主であることが多く、その肩書きが実際の支配権の大半を伴うこともあります。
外資系企業にとってのポイント
- 権限がどこにあるかを見極める。 日本の提携先、顧客、買収対象の企業では、社長が説明した事項を会長が決めることがあります。社長が意思決定者だと決めてかかる前に確認しましょう。
- 子会社に会長を置くことには影響が伴う。 退任する日本法人のトップに会長の肩書きを与えれば関係は維持できますが、後任者の権限が曖昧になりかねません。役割を書面で定義しましょう。
- シニアの候補者は体制を読む。 社長の候補者は、自分の上にいる会長が今も実質的な決定権を握っているかどうかを知りたがります。
- 「非業務執行の議長」と訳さない。 多くの日本企業では会長は業務執行に関わっており、その英語表現は誤解を招きます。
出典
- 会社法第349条・第366条(代表取締役、取締役会の招集)。会長職そのものは企業の慣行。
- 東京証券取引所、コーポレート・ガバナンス報告書の記載要領(相談役・顧問等に就任している元社長等の開示、2018年1月から適用)。