外資系企業は、基本給と目標賞与が候補者の現在の数字を上回っていれば、オファーを競争力があると考えがちです。しかし日本のシニア人材の場合、この比較は通常不完全です。重要なのは、候補者が手放すものすべてと比べたオファーの価値です。
多くの場合、最大の項目は退職金です。日本企業の退職金は勤続年数と最終等級に応じて増え、自己都合で退職する人には定年退職者より低い支給率が適用されるのが一般的です。勤続15年や20年のシニア幹部であれば、数千万円相当を手放すことになる場合もあります。次に賞与です。多くの就業規則は支給日に在籍している者にのみ賞与を支給すると定めており、最高裁は1982年の大和銀行事件でこの条件を有効と認めました。5月に退職する候補者は、すでに稼いだと考えている夏の賞与を失うかもしれません。さらに、外資系企業での権利確定前の株式報酬、住宅手当や家族手当、社宅、非管理職であれば管理職になると消える残業代もあります。
目に見えにくいコストもあります。ゼロからの勤続の積み直し、置いてくる社内人脈、そして海外の判断で再編されかねない外資系子会社に入るリスクです。
外資系企業にとってのポイント
- オファーを組み立てる前に試算する。 総額だけでなく内訳を尋ねましょう。基本給、賞与の月数と支給日、退職金の算定式、権利確定スケジュール、手当などです。
- 適切な手段を使う。 サインオンボーナス、初年度賞与の保証、代替の株式付与、権利確定の前倒しは、それぞれ特定の損失を補うことができます。損失に合った手段を選んでください。
- 入社日を調整する。 候補者が賞与を受け取れるよう入社日を数週間ずらすほうが、賞与を買い取るより安く済むことがよくあります。
- トレードオフを言葉にする。 すべてを補填できなくても、候補者が手放すものを認めることには意味があります。それを無視したオファーは、表面上の数字にかかわらず減給と受け取られ、定着を損なう不満を生みます。
出典
- 最高裁昭和57年10月7日判決(大和銀行事件)(支給日在籍を賞与の支給要件とすること)。
- 労働基準法第89条(就業規則における退職手当と賞与)。